室内環境に関する Q&A
一般の方や関連企業の方などが室内環境に関して抱いているさまざまな疑問に答えることを目的として室内環境Q&Aを作成しましたので、 暫定第1版として公開いたします。いろいろな方にこのQ&Aをご活用いただければと思っております。
 今回のQ&Aでは、室内環境に関してこれまでいろいろな形で、またいろいろな分野に関して質問を受けた項目などを取り上げることにしました。回答は室内環境学会員に書いてもらっておりますが、現状の会員の専門性を考慮にいれると必ずしも網羅できる状況にはなく、とりあえずできるところから開始しております。今後、室内環境学会の活動がさらに広がっていけば、より多くの質問に答えられるようになるものと考えております。「暫定第1版」が表しているように、今回の公開で終わりというわけではなく今後増やしていくとともに、内容の充実も諮りたいと考えております。
 回答ですが、一つの質問に対して複数の室内環境学会員が回答を作成しました。しかし、室内環境に関わる問題は必ずしも正解が一つに定められるものではありません。また今日までに十分には解明できておらず、意見等が異なる課題もあると考えています。Q&Aは社会連携委員会が編集した後に公表しておりますが、まだまだ検討すべき点も残されているかとは思っております。様々なご意見を伺いながら、随時修正を加えていきたいとも考えております。
どんな化学物質が体に影響があるの...........
どんな化学物質が体に影響があるのですか?
どんな化学物質も、濃度によっては体に影響がある可能性があります。したがって、安全性が高いからといって、いくらでも使っていい訳ではありません。人に健康影響を与えることが明らかな化学物質については、法規制により規制値が示されています。例えば、厚生労働省の室内濃度指針値には、13種の化学物質が示されています。しかしながら、指針値が設定されていない物質は安全だという訳ではありません。化粧品や日用品にも使われているアルコールでも、人によっては体に影響が出る場合もあります。また、アロマテラピーなどで、芳香物質を使うと気分が良くなる場合もありますが、これらの芳香物質も、濃度が高くなれば健康に影響が出る場合があります。そのため、室内においては化学物質の使用を必要最小限にし、常に換気に留意することが、化学物質の体への影響を少なくする方法です。

石油ファンヒーターを使用していて..........
石油ファンヒーターを使用していて、体がだるくなるのはなぜですか?
石油ファンヒーターは、灯油の燃焼により部屋を暖める暖房器具です。そのため、灯油の燃焼によって、多くの化学物質が発生します。これら化学物質に曝露されることにより、体がだるくなるなどの健康影響が生じます。燃焼時に発生する代表的な化学物質には、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化窒素、揮発性有機化合物(VOCs)、脂肪族炭化水素があります。この中でも、二酸化窒素は特に濃度が高くなりやすく、健康な人にでも粘膜や気道に刺激を与え、肺の機能が低下するなどの呼吸器障害を起こすことが知られています。また、ホルムアルデヒドやVOCsは、シックハウス症候群や化学物質過敏症の原因としても考えられており、目がかゆい、目がチカチカ、鼻水、鼻づまり、皮膚がかゆい、咳が出るなどの他、倦怠感、頭が重い、頭痛、めまい、吐き気などの症状を引き起こす恐れがあります。

空気清浄機で室内を本当に除菌することが..........
空気清浄機で室内を本当に除菌することができるのですか?
空気清浄機には、除去の対象とする汚染物質によって「ろ過式」、「静電式」、「ガス吸着式」の3種類に大別されます。この中で、ろ過式(HEPAフィルター等)では間違いなく除菌効果があります。ろ過式にも高性能フィルターを用いたものや除菌液を浸み込ませたろ材を用いたものなどがありますが、いずれも室内空気を除菌することができます。しかし、他のタイプでは、狭い実験装置で除菌効果を試験し、その結果をもって実際の部屋でも、同様に除菌できるとうたっているものもあります。空気清浄機を選ぶ時は、部屋の空気を1時間に何回かえることができるかを目安にすることも良い方法です。なお、HEPAフィルターは High Efficiency Particulate Air Filterの略で、空気中の塵埃などをろ過により、取り除くことができるエアフィルターをさします。

空気清浄機で室内に浮遊しているウイルスを..........
空気清浄機で室内に浮遊しているウイルスを除去することができるのですか?
ウイルスの基本構造は、粒子の中心にあるウイルス核酸と、それを取り囲むカプシド (capsid) と呼ばれるタンパク質の殻から構成される粒子です。その大きさは小さいものでは0.05 μmから、大きいものでは0.5 μmのものまで存在します。空気清浄機は、除去の対象とする汚染物質により、装備している空気清浄装置が異なっています。空気清浄装置は、「ろ過式」「静電式」「ガス吸着式」の3種類に大別できます。この中で、ろ過式空気清浄装置はフィルターと室内空気を循環させる送風機から構成されています。フィルターに微粒子を含んだ空気を流すと、微粒子は細孔の周囲の物質に衝突するか、拡散により周壁に吸着され、空気から分離されます。微粒子を捕集するためにはHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルターを用いなければなりません。HEPAフィルター式では、ウイルスを除去できます。空気清浄機は機種により、フィルターに捕捉したウイルスをさらに紫外線やプラズマなどで不活化(殺ウイルス)するものもあります。

理想とする室内環境とはどのようなもの..........
理想とする室内環境とはどのようなものでしょうか?
室内空気の判断基準として、従来から日本薬学会編衛生試験法に普通室内空気試験成績判定基準が用いられており、その他にも建築物衛生法、学校保健安全法によるものなどがあります。
二酸化炭素量が1000-1500ppm以下、落下細菌が一部屋10コロニー以下、浮遊粉じんが0.15mg/m3以下といった衛生基準が設けられており、その他にも気温、気湿(湿度)、気動(空気の流れ)、実際に感じる温度である感覚温度について衛生基準が設けられています。
また、騒音レベルは通常65デシベル(目安:普通の会話、低速走行時の車内)以下が望ましく、室内の明るさは時間帯や目的に応じて、300ルクス(目安:日出入時の屋外)〜1000ルクス(目安:パチンコ店の店内)が必要になるといわれています。
家庭内生活空間と職場環境とでは、それぞれ理想とする環境条件が異なり、それぞれに適う条件を満たす事が必要です。法的に定められた化学・物理的環境基準を満たしているとしても人毎に感受性が異なるため、個々の生体反応の変化に合わせた対応が必要になります。また、理想とする室内を構築するには、健康影響をもたらすと考えられる化学・物理・生物因子の排除の他、空気の流れ、揺らぎ、植物等の設置などを取り入れ、心の安らぎを得る工夫することも重量な要素となります。

<< 前ページ  次ページ >>全 47件
CGI-design