室内環境に関する Q&A
一般の方や関連企業の方などが室内環境に関して抱いているさまざまな疑問に答えることを目的として室内環境Q&Aを作成しましたので、 暫定第1版として公開いたします。いろいろな方にこのQ&Aをご活用いただければと思っております。
 今回のQ&Aでは、室内環境に関してこれまでいろいろな形で、またいろいろな分野に関して質問を受けた項目などを取り上げることにしました。回答は室内環境学会員に書いてもらっておりますが、現状の会員の専門性を考慮にいれると必ずしも網羅できる状況にはなく、とりあえずできるところから開始しております。今後、室内環境学会の活動がさらに広がっていけば、より多くの質問に答えられるようになるものと考えております。「暫定第1版」が表しているように、今回の公開で終わりというわけではなく今後増やしていくとともに、内容の充実も諮りたいと考えております。
 回答ですが、一つの質問に対して複数の室内環境学会員が回答を作成しました。しかし、室内環境に関わる問題は必ずしも正解が一つに定められるものではありません。また今日までに十分には解明できておらず、意見等が異なる課題もあると考えています。Q&Aは社会連携委員会が編集した後に公表しておりますが、まだまだ検討すべき点も残されているかとは思っております。様々なご意見を伺いながら、随時修正を加えていきたいとも考えております。
車の走行中は、窓を開けて外気取り込みを..........
車の走行中は、窓を開けて外気取り込みをしたほうが体に良いですか?
車内には、プラスチック、ゴム、繊維、皮革など、多種類の材料からなる部品や内装材が存在し、これらから様々な化学物質が放散されます。車内空気中の化学物質濃度は、日数の経過とともに減少しますが、室温の高い夏季には上昇し、冬季には低くなります。車で走行中、運転者や同乗者はこれらの化学物質に曝露され続け、換気の少ない状況下では、より高濃度の化学物質を吸収することになります。交通量の少ない住宅地や郊外における大気中の化学物質濃度は、車内の化学物質濃度よりも低レベルであるため、窓を開放し、外気を取り入れて走行した方が、化学物質の曝露量が少なく、健康への影響が少ないと考えられます。エアコンを使用していても、定期的な窓開けによる換気を心がけることが大切です。ただし、都会の交通量の多い場所や、化学物質臭のある工場などの近傍、農薬を散布している農地周辺などでは、窓を閉め、外気が入らないよう注意することも必要と思われます。

焼肉屋で働いてます。焼肉のにおいを..........
焼肉屋で働いてます。焼肉のにおいを吸い続けているのですが、太りますか?
焼肉のにおいを吸い続けたとしても、それが直接的な原因で太るというデータはありません。肥満は、食べすぎ、偏食、運動不足やストレスの蓄積などで起こります。食べ過ぎを控え、食事のバランスを良くとり、適度な運動とストレス解消することが重要です。

外から家に帰ってきて最初にお風呂に..........
外から家に帰ってきて最初にお風呂に入って身体を洗い、服を洗濯すれば、室内の環境はきれいになりますか?それともあまり影響ないですか?
室内環境を汚染する物質は、室外から持ち込まれているものと、室内で発生するものに大別されます。従って、室外から持ち込まれる物質については、帰宅後すぐに入浴や洗濯をすることにより、室内環境への汚染を防げると考えられます。室外から持ち込まれる物質の例として花粉があげられます。花粉は衣類や髪に付着しやすく、髪の毛に付着した花粉が枕カバーなどに付き、花粉症の症状が出る場合があります。そのため、帰宅後すぐにシャワーを浴び、付着した花粉を落としてから床に就くのは効果的とされています。また、畑などで使用される農薬類には、神経系に影響を与えるものがあり、これらの物質は土壌や衣類に付着して室内に持ち込まれます。よって、農薬使用時に着用していた衣類は、帰宅後すぐに洗濯し、農薬を室内に持ち込まないなどの工夫が必要です。以上のことから、外から家に帰ってきて最初に入浴したり、着衣を洗濯したりすることは室内環境を清潔に保つという点からは効果があるといえます。しかし、過度に心配し、外出後に必ず入浴する必要はなく、屋外での活動により判断する事が必要です。

部屋が汚いとどれくらい寿命が..........
部屋が汚いとどれくらい寿命が縮みますか?
環境汚染による健康リスクについて、寿命の損失という指標を用いた産業技術総合研究所の蒲生さんらの研究報告があります。それによると、ホルムアルデヒドが4.1日、トルエンが0.3日、キシレンが0.075日と報告されています。なお、喫煙による肺がんでは370日の寿命の損失、また受動喫煙による肺がんでは12日となっています。
また近年、公衆衛生や健康影響評価の分野では、障害調整生命年(DALY)という指標を用いて、さまざまな要因による疾病負荷を評価しています。DALYは、生存年数の損失分と、障害を余儀なくされた期間の両方を考慮した健康指標です。さまざまな要因による疾病負荷を総合的に表し、それらを比較することができ、世界保健機関(WHO)の疾病負荷に関する報告書で使用されています。
WHOが2009年に公表した報告書によると、日本を含む西太平洋地域先進国における10万人あたりのDALY値は、不衛生な水で42、大気汚染で113、燃焼による室内空気汚染で1と報告されています。しかしながら、高血圧が624、肥満が411、運動不足が395、喫煙が917、飲酒が755、果物や野菜不足が147と、日常の食生活や運動、生活習慣による健康リスクの方が、環境汚染よりも遙かに大きくなっています。

エアコンからの湿った、くさいにおい..........
エアコンからの湿った、くさいにおい(エアコン特有のもの?)は体に悪いですか?
エアコンからの不快なにおいは、エアコンのフィルターやファンに吸着した室内のほこり、汚れ、カビ、菌などに由来するものと考えられ、不快感だけでなく、健康影響を与える可能性があります。特に、花粉症やアレルギー体質の人は気をつけなくてはなりません。室内をこまめに掃除することはもちろんですが、エアコンフィルターの清掃や交換も、定期的に実施することが肝要と思われます。

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