一般社団法人室内環境学会 理事長
近畿大学医学部 教授
東 賢一
一般社団法人室内環境学会第17代理事長に就任し、ご挨拶をさせていただきます。
1990年代に室内環境中の化学物質や微生物などに起因する健康影響の問題が大きく取り上げられるようになり、1994年に本学会の前身となる室内環境研究会が発足してから2024年で創立30周年を迎えました。この間、本学会の会員の皆さんをはじめ、多くの他分野の方々との共同研究や技術開発によって、室内環境に関わる多くの学術的知見や新しい技術が創出され、本学会は室内環境における問題解決に大きく貢献してきました。
しかしながら、化学物質や微生物による室内環境汚染には引き続きいくつもの課題が残っており、さらなる研究が進められています。また近年、世界的大流行をもたらした新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、その大半が室内環境で生じていることから、室内環境における二次感染の動態解明や感染予防に関する科学的知見や新しい技術の創出が強く求められています。また、室内環境においては、温熱、湿度、騒音、振動、光、電磁界などの物理的因子も居住者の健康に大きく関わっており、これらの要因の影響も近年の疫学研究などで明らかになってきております。こうした状況において、本学会は学術的および社会的にも重要な役割を担っており、さらなる活動を行っていかねばならないと考えております。
本学会には、室内環境に関わる社会的問題が生じた際に、迅速かつ積極的に活動される素晴らしい会員が多数います。COVID-19のパンデミックが生じた際には、この分野に関係する研究者や技術者が集まって、「室内環境における新型コロナウイルス感染対策ワーキンググループ(WG)」が発足し、実験的研究、フィールド調査、情報発信などが行われました。2024年初頭に能登半島地震が生じた際には、「能登半島地震に関連した室内の温熱環境・空気質の改善に関するWG」が設立され、避難所や仮設住宅の室内環境調査や改善のための支援活動が行われ、現在でも継続されています。この活動においては、本学会の法人会員などから空気清浄機などの機器類の無償提供を受けるなど、多くの会員からの支援を受けてWG活動が行われてきました。このように、本学会には社会における危機的状況に対しても、多くの会員が手を取り合って立ち向かっていける、そういった会員相互の協力関係や信頼関係があり、本学会の大きな強みとなっています。このような学会活動は、新しい学術的知見や技術の創出につながるとともに、社会政策の面でも新たな提言や施策を生み出すことにつながります。
これからの本学会の活動におきましては、このような学会内での活動のみならず、関連学会等との連携や協働の強化、施策や社会への提言の促進などの活動を今後もさらに進めていきたいと考えております。会員の皆さまにおかれましては、本学会のさらなる発展のため、学会活動へのご参加、ご支援、ご助言などにつきまして、お力添えを賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
大会長:林基哉(北海道大学)
日時:
2024年11月29日(金)創立30周年記念講演会
2024年11月30日(土)~12月2日(月)学術大会
会場:北海道大学 学術交流会館(北海道札幌市)
大会HP:こちら
【国際連携】TSIEQ 2024
2024 Asia Conference on Innovative Approaches to Enhance Healthy Indoor Environment
主催:Taiwan Society of Indoor Environmental Quality
日時:November 1-2, 2024
場所:Taichung, Taiwan
詳細はこちら
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A5版 258頁 定価 3255円(税込)
2010年11月30日刊
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【国際連携機関】